薬物依存症
摂取しているうちに、やめることができなくなる物質を、依存性物質といいます。
依存性物質は、覚せい剤、コカイン、大麻などの違法薬物以外にも、アルコール、睡眠薬、抗不安薬、咳止め薬、鎮痛剤、ニコチン、ブタンガスなど、多岐にわたります。
依存性物質をやめることができなくなるのは、意志が弱いからではありません。
依存性物質の使い過ぎによって、脳に障害が生じるからです。これを薬物依存症と言います。
薬物依存症は、心の病気や性格の問題と誤解されがちですが、本当は脳の疾患です。
したがって治療が必要ですし、治療によって治る病気です。
薬物依存症 チェック
- 薬を止めたいのに止めることができない
- 薬が切れると身体的あるいは精神的に不調になる
- 薬の使用量が増える傾向にある
- 薬の使用間隔が短くなる傾向がある
- 薬を確保するためにかなりの時間とお金を使う
このうちどれか一つにでも当てはまれば、依存症の可能性があります。
精神科医療機関に相談されることをお勧めします。
症状
薬物依存症は癌と同じ「進行性疾患」です。薬物を使用し続ける限り、脳の障害は悪化していきます。
その進行段階に応じて4つの病期に分けられます。
1.依存期
時折襲ってくる薬物への渇望が、この時期に共通した唯一の症状です。
2.離脱症期
薬物の切れ目に身体的あるいは精神的不調が現れます。身体的不調の代表的なものは漠然とした不快感と不眠です。その他、異常発汗、動悸、めまいなどの自律神経症状が現れます。精神的不調の代表的なものは、イライラです。その他、意識がもうろうとする、夢遊病のような行動をするなどの意識障害が現れることもあります。
3.精神病期
幻聴、幻視、被害妄想が代表的な症状です。勘ぐりやすくなるのも被害妄想の一種です。
4.認知障害期
代表的な症状は記憶障害です。記憶障害は自分では気づきにくい症状ですが、物忘れが増える、ちょっとしたことが覚えられないということで自覚できることがあります。
治療方法
薬物依存症の治療は、基本的に外来で行います。
治療は、心理療法、薬物療法、作業療法、生活環境調整を、患者様の必要度に応じて組み合わせていきます。依存期は心理療法、精神病期は薬物療法が治療の中心となります。
薬物依存症は、いったんやめた薬物を再使用しないことも、重要なポイントになります。依存症治療専門病院では、薬物の再使用を防ぐための多彩な心理療法を受けることができます。支持的精神療法、心理教育、個人心理療法、認知行動療法的心理療法、条件反射制御法など、準備された様々なプログラムの中から、その患者様にあったプログラムを組み合わせて、再使用防止のための治療を実施していきます。
克服のポイント
- 薬物依存症は、薬を使用し続ける限り、だんだんと悪化する進行性疾患です。
まずは、その事実から目を背けないことが克服への第一歩です。 - 薬物依存症は、脳障害を基礎とした疾患です。自分の力で治すことはできません。
思い切って精神科医療機関に相談してみてください。必ず希望が見えてきます。 - 薬物依存症は、薬物をいったんやめても、再使用する癖が残ります。
依存症治療専門病院では、この癖を治すための様々な治療プログラムが準備されています。
当院もその一つですので、ぜひご利用ください。